3 「別離」


神竜の月17日 曇り

アルモリカに帰った俺達を待っていた次の任務は
フィダック城に行き暗黒騎士団と『非干渉条約』を結ぶための書状を届けるという任務だった。
マジかよ…、暗黒騎士団と手を組むってのかよ?
公爵はバクラムの豚共と手を組む気かよ?

俺達ウォルスタは、西をガルガスタン、北をバクラムに挟まれてる状態だ。
しかも三国で一番戦力も少ない。
ガルガスタンを倒すまでバクラムに余計なチョッカイを出さないで欲しいって事か。
両方なんて相手には出来ないからな。
ある意味当然といえば当然の作戦か…
しかし、デニムとカチュアはこの任務を受けるのか?
あいつらは親父を暗黒騎士団に連れ去られてるってのによ。
それ以前に暗黒騎士団がこれを受けるのかどうか…
受け入れられなきゃ俺達ウォルスタに未来は無ぇけどな…


神竜の月18日 晴れ

結局デニムもカチュアもこの任務を受けるみたいだ。
そりゃそうだ。イチイチ個人的な感情で任務を放棄されちゃこっちが堪らねぇぜ。
大体俺も親父を暗黒騎士団に殺されてるんだ、ブツクサ言うんじゃねぇってんだ。
ま、あんな親父は死んでくれてせいせいしてるがな。
あのクソ親父の所為で俺はガキの頃から厄介者扱いされてたんだからな…
まぁそんな事はもうどうでもいい。
俺は親父のようにはならねぇ。自分の力でのし上ってやるぜ。


神竜の月19日 晴れ

ゴルボルザ平原でガルガスタン軍と小競り合いになった。
たいした兵力じゃ無かったのであっさりカタをつけた。
しかし、こんなとこまで来てやがるのかよ。
こりゃ、ライムでも一悶着ありそうだな。


神竜の月20日 晴れ

やはりここライムにもガルガスタン軍がいやがった。
しかし連中は見知らぬ女と言い争ってやがった。
好都合とばかりに通り過ぎようとした時、デニムの奴がまたイイコぶりやがった。
「いずれにせよ放ってはおけない。助けるぞッ!」だとよ。
俺達が今重要な任務中なのを忘れてるのか?
大体見ず知らずの女を助ける為に俺達を争いに巻き込むなんて、やっぱりデニムはリーダーの器じゃ無ぇな。
結局ガルガスタン軍を蹴散らし、その女を助けた。
その女の名前はシスティーナ…バクラム人だった。


神竜の月21日 雨

バクラム人ってだけでムカつくのに、システィーナって女はヴァレリア解放戦線のメンバーだった。
ヴァレリア解放戦線、あの過激派の連中かよ。厄介な事になったな…
しかも、「以前のような平等な世界を取り戻す為に戦っている」と来たもんだ。
ふざけんじゃねぇ!
おまえらバクラム人にとってはそうだったかもしれないが、俺たちは虫ケラのように扱われていたんだッ!
ちっ、やっぱりこんな奴助けるんじゃなかったぜ。
俺達は真の平和、つまりウォルスタ人が人間らしく生きていける世界の為に戦ってるんだ。
バクラムの連中なんかと手が組めるかってんだ。


神竜の月22日 曇り

システィーナと別れた俺達は、無事フィダック城に着いた。
レオナールが門番に話をつけると、バールゼフォンとか言うジジイに客間に通された。
しかもランスロットがここに居るって話じゃねぇか。
ランスロット・タルタロス、以前俺とデニムが殺そうとした相手だ。
とは言え今は任務で来ているんだ、デニム抑えろよ。
そう思ってたらいきなりやっちまいやがった。
デニムの馬鹿がランスロットに食いかかりやがった。
意外にもランスロットは自分の非を認めあやまったが、ここで殺されるかもしれないってのに。
やっぱりデニムはリーダーに向いてないぜ、俺がリーダーになるのが一番なんだよ。


神竜の月23日 曇り

アルモリカに戻ると、また次の任務が待っていた。
いくら人手不足とは言え、俺達ばかり働きすぎじゃ無ぇか?
まあそれだけ評価されてるって事だろうが…

でその任務ってのが、バルマムッサにある強制収用所の同胞を武装蜂起させるってモンだった。
なるほど、バルマムッサには五千人程のウォルスタ人が強制労働させられているからな。
確かにそれだけの人数が戦力となれば…
俺達の任務は連中を説得する事だ。
これが成功すればガルガスタンに一泡吹かせることが出来る。
失敗は許されねぇな…


神竜の月24日 晴れ

デニムがランスロットに挨拶してくるとか言いやがった。
おいおい、何言ってんだ?
こんな重要な任務の前に私事で出発を遅らせるとは…
くそっ、何であんな奴がリーダーなんだ?
公爵もデニムじゃなくて俺を使えッてんだよ。


神竜の月25日 晴れ

ボルドュー湖畔にてガルガスタン軍と戦闘。
何の問題も無く撃破。
最近思うが、俺…強いな…
デニムが居なくても俺さえ居れば…


地竜の月1日 曇り

ゾード湿原でまたもガルガスタン軍が仕掛けて来た。
しかもグリフォンまでいるじゃねぇか…
こいつはちょっとばかり厄介だな。
と思ったらグリフォンがやられそうになるとすぐに退却しやがった。
何だったんだ、一体?


地竜の月2日 雨

もうすぐバルマムッサに着くな。
しかし、公爵を助けてからこっち、俺達は連戦連勝だ。
これで周りの連中も俺の事を見直すハズ
……クソッ、分かってるさ!
どうせ皆デニムしか見てないんだろう?
公爵が頼りにしてるのもデニム。
レオナールが期待してるのもデニム。
ランスロットが認めてるのもデニム。
カノープスが可愛がってるのもデニム。
プレザンスが感謝してるのもデニム。
そして、カチュアが愛してるのもデニム。
どいつもこいつもデニム、デニム…
俺の何処がデニムより劣っているってんだ!
俺を見ろ!俺の事を見てくれ!俺の事を認めてくれ…
俺は…俺は……


地竜の月3日 雨

この日は俺の運命を変えた日だった。
俺だけじゃない。デニムの運命も、カチュアの運命もだ。
俺はこの日のことは一生忘れないだろう。

バルマムッサに着いた俺たちは警護兵達を蹴散らし、囚人達の説得にあたった。
しかし連中は戦う気がまったく無かった。
それどころか俺達を邪魔者扱いしやがった。
今の家畜同然の生活のまま、生きて行くだとよ。
ウォルスタの、ウォルスタの誇りは何処に行ったんだ!
俺達の今までの戦いは何だったんだよ!
話は完全に平行線だった。
そこに遅れてレオナールが来た。
レオナールと話をする為外に出た時のレオナールのセリフ、今でも覚えてるぜ。
その言葉はおれの運命を変える言葉だった。

「これから町の住人を一人残らず殺すんだ。」

デニムは当然驚いていた。俺だってそうだ。
つまり公爵の考えはこうだ。
「…バルマムッサの住人がすんなりと蜂起するなら何も問題はない。
しかし、やつらは武器を手に取り革命のために命を投げ出したりはせんよ。
そのときはガルガスタンを装い、住人を一人残らず殺すのだ。
ガルガスタンとの戦いに勝つには、これまで以上に我々、ウォルスタの団結が必要なのだ。
バルマムッサがガルガスタンによって滅ぼされたとあれば、
他の自治区にいる同胞は否応もなく戦わざるを得まい。
それに、そうした暴挙をガルガスタンの反体制派が黙ってはおるまいよ。
いずれにせよ、バルバトスは戦力を我々とガルガスタン内部の反体制派に分散しなければならなくなる。
そして我々は、勝機とバルバトスを討ち取る大義名分を得ることができるというわけだ。」
確かに一理ある。
実際ここの自治区の連中は戦う気が無かったし、このままでは俺達はガルガスタンに負けてしまう。
公爵の言う通りにしないと、俺達に未来は無ねぇ。
しかしデニムは反対した。
「罪もない人々を殺して何が大儀だッ!」なんて言ってやがる。
戦う意思の無いヤツなんか死人と同じじゃねえか。
何人殺したって、死人なんだから誰もとがめやしないさ。
それどころか同胞のためになるなら喜んで死ぬさッ。
そうさ、俺は公爵に従うぜ。デニムなんか居なくても俺が居ればいいんだよ。
すでにレオナールの部下がデニム達を取り囲んでいた。
デニム達の事はそいつらに任せてレオナールと供に街の連中を虐殺して回った。
俺は間違っていない。俺の行動がウォルスタの明日を作るんだ。

デニム、次はおまえの番だ。…そのときまで死ぬなよッ!

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