唐沢 拓三
〜日本フェザー級7位〜
唐沢拓三。
はじめの一歩を毎週立ち読みしてる程度の人だと、どんな人物だったか思い出すことすら困難かもしれない。
それほど、彼は地味な存在だった。
拓三の初登場はコミックス62巻。
当時の一歩は、インファイターの島袋・アウトボクサーの沢村と連続して強敵を倒し、フェザー級王座を五度防衛中。
次はどんなタイプがくるのかと読者が楽しみにしていた時だった。
そんな状況で名乗りを上げたのが、我らが唐沢拓三である。
拓三はこの時、フェザー級7位。成績は14戦10勝(6KO)3敗1分。
とてもじゃないが、一歩に勝てるとは思えない成績である。
それどころかこの成績では、青木や木村にすら勝てなさそうだ。
しかし、”デンプシー対策あり”と公言し自信満々に挑戦してきた。「何かあるハズ」読者はそう思ったはずだ。
もっとも我々読者は、この段階ですでに一歩の勝ちは疑っておらず、どんな相手か、どんな試合になるかを楽しみにしていた。
しかし作中では我々の予想とは裏腹に、楽勝ムードでは無かった。
篠田 「このタイミングで名乗りを上げてくるなんて、かなり自信があると思うし。」
真田 「難攻不落の王者が陥落する確率は、こういったケースが極めて高い。」
会長 「勝って当然と言われるじゃろう。ふん…やりにくいわい。」
青木&木村 「沢村戦で受けたダメージ+新型デンプシーの負担。不安材料は意外と多いのかもな。」
こういう会話が続くので、「勝つにしてもある程度苦戦するんだろうか?」と思うようになる。
まぁ、流石に一歩が負けるとは誰も思わなかっただろうが。
一方の我らが拓三。デンプシー対策以外にも余念がない。
腹を鍛える拓三。
デンプシーは左右からのフック。つまりは頭部を狙う技である。それ以外のボディ攻撃に対する備えとして、腹筋を鍛える拓三。
先輩に当たる真田も「なるほど。唐沢はやるべき事をよくわかっている。」と評価している。
一歩の作戦自体、”ボディを打って足を止める”だったので、拓三は確かにやるべき事をやっているといえる。
試合が迫ってきて、一歩の公開スパー。マスコミが一歩と話している。
記者 「ほら、相手の唐沢選手って地味じゃない」
記者にまでなめられてる拓三。
マスコミ連中はどうも、一歩の楽勝と思っている様子。
しかし、こういうシーンを見ると、我々読者は逆に「かなり善戦するのでは?」と思ってしまう。
いよいよ一歩vs唐沢の試合が始まる。
立ち上がり、拓三は一歩のジャブ(空振り)一発で顔面蒼白になる。
唐沢のジムの会長も、「もらったら終わってたな」と言っている。
おいおい、「終わってた」って。拓三ってかませ犬じゃんΣ(゚Д゚;)
いやいや、まだわからないぞ。試合は始まったばかりだからな、うん。
取りあえずは最初の一発をよけた拓三。手数で積極的に攻め、足を使って距離を取る。
一方的に攻め続け、リズムを作っていたかに思われたが、気づけばコーナーに追い込まれている。
すごい顔でビビっているw
コーナーに追いつめられた拓三に一歩が迫る。ガードして耐える唐沢。
ガードが堅いと思った一歩は、当初の予定通りボディ攻撃に切り替える。
しかし、そこは我らが拓三。
ボディを岩のように鍛えて来たので、ボディを一発食らってコーナーから脱出する策を取る。
貫通!?(((( ;゚Д゚)))
そ、そんな。拓三はあれだけ腹筋を鍛えていたのに(つД`;)
まぁ、実際に腹がえぐり取られた訳じゃないのですがw
そういえば試合前、拓三はこう言っていた。
実際はボディ一発で止まりましたが。
1R残り30秒。
このまま終わるかと思われたが、そこは我らが拓三。クリンチでしのぎます。
しかしそこで真田の叫び声が。「まずい!!離れろ、唐沢ぁっ」「後ろに飛べ〜〜っ」
言われたとおり、後ろへ飛ぶ拓三。
そこへ凄い勢いの一歩のアッパー。なんとか真田に言われたおかげで間一髪かわす。
が、かわした所へジャブを食らい吹き飛ぶ。
1R残り15秒。
しかし拓三は1Rで終わってたまるかと頑張ります。
ガードを固めて耐えます。「ガ、ガードの上からでも、気が遠くなる……」と心の中でつぶやきながら。
そしてまたクリンチ。
先ほど、クリンチは危険だとわかったのに、またやってます。流石は拓三。
しかし、同じ失敗をしないのが我らが拓三。柔道のようにそのまま倒れ込んで無理矢理1R終了まで粘ります。(反則?)
2R開始。
回復した拓三は軽快に足を使ってとばします。
おお、遂に拓三の本領発揮か!?GO!GO!拓三!
ん?
あ、あれ?
ちょ、まさか……
またコーナーだーΣ (゚Д゚;)
ここぞとばかりに一歩が襲いかかる。
しかし無問題。我らが拓三にはデンプシー対策がある!
さあ、見せてくれ拓三!おまえのデンプシー破りを!!
あら?沢村のパクリ?(そういえば先輩に当たる真田のデンプシー破りも千堂のパクリだったなぁ…)
沢村はカウンターを使いながらも負けたのに………
……いや。要はこれを当てて、倒せば良いんだよ!少なくても流れを変えるには充分なはず!行け、拓三!
あれ?デンプシーじゃなくてボディ攻撃ですか?もしかしてヤバイ?
いや、大丈夫。拓三はこの時のために、ボディを岩のように鍛えてきたんだから。
さっき、腹がえぐり取られたように感じたのも気のせいだったし。
耐えるんだ。耐えればチャンスだぞ!拓三!
「あ……あんなに鍛えたのに、俺の腹は耐えられないのか〜〜〜〜〜っ」
た、たくぞーーーーーーーーー(;´Д⊂)
それでも拓三は頑張る。倒れない。更に一発、腹に貰うが耐える。
そして、左フックを引っかけて体を入れ替えようとする。よし、拓三はまだあきらめていないぞ!
……しかし、それを待ってた一歩がその隙をついて顔面に一発。
顔面にパンチを貰った拓三は、二回転して吹っ飛んだ。
それで試合は決まった。
ヤムチャ?
2R 2分15秒、KO負け。
こうして拓三のタイトルマッチは終わった。
ボディ以外でまともに食らったパンチは最後の一発だけ。
デンプシー破りを公言しながら、デンプシーを使われずに負けた。
唐沢拓三。
彼は我々読者の予想を上回る惨敗を喫した。
彼は一体何のためにこの作品に登場したのだろうか?
その答えは、彼の最後のこのセリフに現れているのではないだろうか?
「…実感が残っているのは、あの腹打ち。
予想をはるかに上回っていましたよ。とても耐えられる代物じゃなかった。
あんな破壊力反則だよ。不公平にもほどがある。
だけど…、もらって実感しちゃいましたよ。ああ、そうかって。
ああいうモノ持ってる人間が上に行くんだって。
頂上ってのはそういう不公平な連中が住む世界なんだって……」
唐沢拓三。
我々は彼の勇姿を忘れないだろう。
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